もう逃げない。ちゃんと棗と向き合わないとダメだって頭ではそうわかっているけど、それでもやっぱり怖かった。

もしも棗に拒絶されたらと思うと…。


「茉莉花」


棗は私の想いを察したかのように震えていた手を優しく握りしめてきた。


「俺たちの出会いは、最悪だったよな。俺が勝手に勘違いして、苦しんでいた茉莉花に気づきもしないでひどいこと言って、あの時のことをずっと後悔してる」


たしかに、あれは結構傷ついた。

何も知らないくせに、って棗に八つ当たりをしたことを思い出す。


「だけど、棗はどんな時でも私を信じてくれた」


もう誰かを信じることも信じてもらうことも諦めていた私が、棗のことだけは諦められなくて信じてもらいたいと足掻いた。

ぶっきらぼうだけど優しいところは昔から変わっていない。

そんな棗に私は惹かれたんだ。


「あの時の言葉、撤回してもいいか?」

「…え?」