場違いにも頬がぶわっと熱くなるのを感じる。


「それに祐樹はそんなことをするようなやつじゃない」

「…は?何言ってんだよ。散々おまえのことも傷つけて、あの後だってヤケになって悪い噂ばかり流しておまえだけを悪者にしたのは俺なんだよ…?なんでそうやって信じられるんだよ」


泣きそうな顔で笑っている坂上くんに、少し前までの自分と重なる。

必死に悪でいようとしていた私の姿に…。


「坂上くんも後悔してたんだね」


ハッと坂上くんが弾かれるようにして顔を上げた。


「私は二人の事情を深く知らないし、えらそうなことなんて言えないけど、それでもバイトで知り合った坂上くんは優しくて私の失敗もさりげなくフォローしてくれて、そんな人が誰かを傷つけるようなことはしないと思ったよ。今だって、棗を憎んでいないと、悪役にならないとその感情をどうしたらいいかわからないって、そんな顔してる。本当は親友の棗のことを信じてあげられなかった自分が坂上くんは一番許せないんじゃないの…?」

「ただいまー。って、なんだ修羅場か?」


タイミングよく帰ってきた店長さんが不思議そうに私たちを見比べてきた。


「え、七瀬さん、どうしたの!?服がはだけて…こいつらに襲われたのか!?」

「おそ…っ!?違います!えっと…あ、虫!虫が服の中に入って驚いちゃって…」


店長さんが戻ってきたことにより坂上くんは逃げるように奥に行ってしまい、話はそこで終わりとなった。

二人のわだかまりは溶けないまま…。