乗り気ではなかったけど、本当の友達ならきっと気づいてくれると私はそう信じていた。

幸いにも私とよく一緒にいてくれた友達は一人ではなく複数であったし、クラスメイトみんなから好かれている自信はないけどそれでも嫌われていることは絶対にないと思っていたから。

だから、ちょっとした演技と美亜のありもしない私に関する悪口を聞いたところで、みんなが呆気なく離れていくだなんて考えもしなかった。

悪女となった私に残ったのは、それでもまだ誰かを信じていたいと思う気持ちだけだった。


「おまえみたいな悪女、誰も好きにならねぇよ」


男の子に投げ捨てられるようにして言葉を吐かれ、ハッと我に返る。


「棗、失礼だろ」

「なんだよ?じゃあ兄貴はさっきのを見ても、こいつを好きになれる未来があると思ったか?俺は無理だな。同じ人間とは思えない」


先輩は何も言い返せずに口をつぐんでいた。

大丈夫。最初からこんな私を助けてくれる人が現れるなんてもう期待していないから。


どんなに築いた時間や関係があっても、他人の些細な言葉や嘘で簡単にも崩れるほど人間は脆いから。

悪女になる道を選んだ私に、誰かに好かれる未来なんて存在しないんだ。


「…私だって、誰も好きにならない。一人でいた方がずっとマシ」