目を輝かせながら身を乗り出してきた和佳の口を慌てて塞ぐ。


「…って、やっと?もしかして、和佳…」

「茉莉花の気持ちなんてとっくに気づいてたよー。告白までしてたなんて知らなかったけど」


和佳に気づかれていたなんてそっちの方が驚きで、思わず目を丸くする。


「そっかー。でも返事聞く前に逃げちゃったんだ?」

「逃げたというか、聞くまでもないと思っただけだよ…。悪女の私が誰かのヒロインになれるわけがないんだから」


がしっと和佳に両頬を掴まれ、ぎょっとしながら顔を上げる。


「何それ。茉莉花が諦めてどうするの?向坂への気持ちはその程度だったの?願い事は、願うことをやめたら一生叶わないんだからね!」


和佳の言葉でハッと我に返る。

私がずっと願っていたこと。それは…。



「七瀬さん、最近あの彼氏とは一緒に帰ってないみたいだね?」

「…え?ああ、あの人は彼氏じゃないし、今ちょっと気まずいというか…」


店長さんが買い出しに行っていて珍しくお客さんも誰もいないカフェで、坂上くんと他愛もないことを話していた。