「ちょっと、茉莉花?」


私に向かって伸ばしてきた美亜の手を思いっきり振り払う。


「私は、死ぬまで美亜の悪女でもなんでもいい…。家でどう思われようがどう扱われようがどうだっていい。私の本当の家族はもういない。どう頑張ったって蘇ることはないんだから。私が今までどんな惨めな気持ちでこの三年間生きてきたかわかる?大切な人を亡くしたことないくせに、両親がどっちもいるくせに、偉そうにしないでよ!もうこれ以上、私から大切な人を奪わないでよ!」


美亜は頬をぶたれたかのように目を見開きながら、呆然と立ち尽くしていた。

棗の腕を引っ張り、その場から立ち去る。


ずっと胸に秘めていた想いが溢れてしまった。

押し殺してきた私の想いが…。


「…おい待て。ちょ…っ」


空いていた観覧車に棗を押し倒すようにして入れ、私も中に入る。

そして棗の上から覆い被さるようにして押さえつけ、もう逃げられないようにする。

瞳からぼろぼろとこぼれ落ちた涙が棗の胸元に吸い込まれていく。


「…茉莉花」


オリエンテーションの日以来呼ばれた名前に、嬉しいはずなのに涙が止まらなかった。