「俺たちも行く?それとも話があるならここでもいいけど」


にこっと微笑んでくる柊弥先輩に気まずくて口籠もりながら顔を背ける。

どうしよう。柊弥先輩のことをすっかり忘れていたけどどうやって誤魔化せば…。


「なんて、俺と話したいなんて嘘で、また美亜ちゃんのために話合わせただけでしょ?二人のこと追いかけに行こうか」

「…え?」


優しく腕を引っ張ってきた柊弥先輩に驚いて目を見開く。


「実はオリエンテーションの日に美亜ちゃんが自分でバケツの水を被ってるとこ見ちゃったんだ。その時に二人の会話も聞いた。あ、安心してよ。このこと広めるつもりはないし、美亜ちゃんの機嫌損ねるようなことはしないから」

「な…っ」

「むしろ茉莉花ちゃんに協力してあげる。俺もまんまと噂に騙された最低なやつだから」


お化け屋敷に入って行こうとする柊弥先輩をぐいっと引き止める。


「…行かない、です」

「どうして?棗を美亜ちゃんに取られてもいいの?」


なぜ柊弥先輩が協力的なのかはわからないけど、ここで棗たちを追いかけるわけにはいかない。