美亜だと思われているままなんて嫌だ。
信じさせる証拠なんてないけど、それでも、今の棗ならもしかしたら私の言うことにも耳を傾けてくれるかもしれない。
「ああ、あれおまえだろ」
「…え?」
「別に心配しなくても、七瀬美亜の言ってること真に受けてねぇよ。堂々とあんな嘘をついてくる時は驚いたけどな」
あまりにもさらりと信じてくれるものだから、思わず拍子抜けして目を丸くする。
「え?なにそれ…最初から気づいてくれてたの?」
…ん?まって、そういえばスルーしていたけど、棗がここに入ってきた時も「また一人で泣いてたのか」って言ってきたよね?
まるで昔泣き虫だった私を知っているかのように…。
「入学したての頃は全然気づかなかった。だけど、おまえがボスを助けてくれたあの日、おまえの笑顔を見てすぐに気づいた。久しぶりだな。泣き虫だったやつが悪女に進化してるだなんて思いもしなかったけど」
ふっと小さく笑った棗が泣いて腫れている私の目尻をそっと指でなぞってきた。
「…棗だってこんなに冷酷王子なんかじゃなかった気がする。いやでも、愛想は悪い方だったっけ」
「そりゃ時が経てば人も変わるよな。…俺も、あの頃と随分変わったしな」
ふと、棗が悲しそうに一瞬顔を歪めたような気がしたけど、すぐに元通りの愛想がない顔に戻っていて気のせいだったのかなと深く考えることはなかった。
だから、気づかなかった。
棗もまた傷を抱えて生きていることに…。
信じさせる証拠なんてないけど、それでも、今の棗ならもしかしたら私の言うことにも耳を傾けてくれるかもしれない。
「ああ、あれおまえだろ」
「…え?」
「別に心配しなくても、七瀬美亜の言ってること真に受けてねぇよ。堂々とあんな嘘をついてくる時は驚いたけどな」
あまりにもさらりと信じてくれるものだから、思わず拍子抜けして目を丸くする。
「え?なにそれ…最初から気づいてくれてたの?」
…ん?まって、そういえばスルーしていたけど、棗がここに入ってきた時も「また一人で泣いてたのか」って言ってきたよね?
まるで昔泣き虫だった私を知っているかのように…。
「入学したての頃は全然気づかなかった。だけど、おまえがボスを助けてくれたあの日、おまえの笑顔を見てすぐに気づいた。久しぶりだな。泣き虫だったやつが悪女に進化してるだなんて思いもしなかったけど」
ふっと小さく笑った棗が泣いて腫れている私の目尻をそっと指でなぞってきた。
「…棗だってこんなに冷酷王子なんかじゃなかった気がする。いやでも、愛想は悪い方だったっけ」
「そりゃ時が経てば人も変わるよな。…俺も、あの頃と随分変わったしな」
ふと、棗が悲しそうに一瞬顔を歪めたような気がしたけど、すぐに元通りの愛想がない顔に戻っていて気のせいだったのかなと深く考えることはなかった。
だから、気づかなかった。
棗もまた傷を抱えて生きていることに…。

