「あ、ううん!怪我はしてないよ。えっと…」

「歩きにくい道を長時間歩いたせいで一時的に歩けなくなってたからおぶってきた。もう大丈夫だろ?」

「あ、うん。ありがとう…」


熊にびびって腰を抜かしたなんて言えなくてどうしようかと口籠もっていると、棗がフォローするかのように言葉を被せてくれた。


「向坂かっけぇ!山道ではぐれたクラスメイト(女子)を助けるなんてまさにヒーローだな!」

「…うるせぇよ」


私を下ろしてくれた棗は槙野くんを連れて歩いて行ってしまった。

結局、あの女の子は私だと棗に言い出せないまま…。