「…うんっ!なんか大丈夫になってきたかも」


不思議と男の子の言葉が魔法のようにおなかの痛みを和らげてくれて、自然と笑顔を返していた。


「泣いた顔しか知らなかったけど、笑った方が可愛いじゃん」

「え?」

「いや、なんでもない…」


耳まで真っ赤になっている男の子に、こちらまでなんだか恥ずかしくなってしまい小さな背中に顔を埋める。

温かくて心地いいけど、少しだけドキドキするこの時間がもう少し長く続けばいいのに。そう思った。



結局あの男の子とは退院して以来会っていないし今もどうしているのか知らないけど、もしかして棗の言っている女の子って私のことなんじゃないのかな?

話を聞く限り、棗の記憶と私の記憶は同じ思い出な気がする…。


「その女の子…」

「あ、茉莉花!よかった、向坂が見つけてくれたんだね…!」


いつの間にか頂上に着いたようで、私たちに気づいた和佳と槙野くんが心配したように駆け寄ってきた。


「どこか怪我したの!?」