「あ、うん…わっ!」


慌てて立とうとするが、足がよろけて咄嗟に手を伸ばしてくれた棗に寄りかかってしまう。


「ご、ごめん…。熊でも出るんじゃないかって思ったら怖くて腰が抜けちゃって…」

「熊?そんなものこんなところで出るわけがないだろ。アホか」

「へ…?だ、だって和佳も言ってたし…」

「あれは槙野を脅すために言ったデマだろ。あんなのを真に受けてたのか?」


その通りすぎて恥ずかしくて思わず俯くと、棗の大きくて広い背中が目の前に現れた。


「…え?」

「立てないなら乗れ。おぶっていった方が楽だ」

「で、でも…」

「早くしろ」


少し迷ってから、お言葉に甘えて棗におぶってもらうことに。


「あの…重くない?」

「熊よりは重くねぇよ」