後ろからパタパタと追いかけてきた美亜が私の腕に自分の腕を絡めてくると、にこっと微笑んできた。


高校こそは美亜と離れたくて誰にも志望校を教えていなかったのに、おそらく私の志望校調査票を勝手に盗み見た美亜が私と全く同じ高校を志望していると受験ニヶ月前に知った。

レベルを下げようか迷っていると見透かしたかのように「高校も一緒のところに行こうね」と言ってきた美亜から逃げることなんて結局できなかった。


「見て、七瀬(ななせ)姉妹…!今日も美しい…」


美亜が可愛いのはもちろんのこと、私は目立たないように必要最低限しか身だしなみは整えないようにしているけど、それでも美亜と並んで歩けるくらいには顔は整っている方だと自覚している。

だから昨日の入学式から私たちに向けられる好奇心や羨望、好意的といった様々な視線を受けていた。


…だけどそれもきっと今だけのこと。

その視線は近いうちに美亜だけのものになるのだから。


「どっちも美しすぎて声掛けらんないよねー…」

「わかる。でも強いて言うなら私はお姉ちゃんの七瀬茉莉花推しかな〜」

「俺も茉莉花様だな〜。美亜ちゃんはほわほわ系でthe可愛い女子!って感じなんだけど、茉莉花様はクールで知的そうで周りにはいない感じの美を持っていて惹かれるんだよなぁ」


本人に聞こえてもいいと思っているのか、周りで勝手に言いたい放題言っている生徒たちに「あ、やばい」と直感する。


「…茉莉花」