「疲れたー!」


前を歩いていた槙野くんが体力の限界を迎えたようで、ぐったりとその場にしゃがみ込んでいた。


「まだ坂登んないといけないの!?頂上はまだかよー」

「あと少しなんだから頑張んなさいよ。それでも男?」

「だってもう足痛いしー…」

「じゃあみんなで槙野置いていこ。ここ熊出るからね?頭から食べられるかもね」

「わーん、待ってよ和佳ちゃんー!」


スタスタと容赦なく歩いていく和佳を慌てたように槙野くんが追いかけていて、その様子を微笑ましく見守る。

置いていくと言いながら、槙野くんをチラチラとさっきから気遣っていたのを私は知っている。

なんだかんだお似合いの二人なのかもしれない。


「…あ」


ふと、右靴の紐が解けていることに気づき、しゃがみ込んで直す。

今まで学校行事とかあまり楽しみにしていたことはなかったけど、今回は友達がいるからかずっと浮き足立っている。