私たちの会話に聞き耳を立てていた周りの生徒たちがざわめきだした。

今のは私の本心であったけど、結果的に悪女を演じたことに変わりはなかったから。


「おい、茉莉花。藤峰が探してる。点呼始まるし行かないとだろ」


周りからの陰口にぎゅっと拳を握りしめて耐えていると、ふと棗に腕を掴まれた。


「…え?」

「…あれ、棗くん?なんで棗くんが茉莉花と…」

「同じ班だからだけど?…てかおまえ、誰だっけ」


私の腕を掴んだまま怪訝そうに首を傾げている棗に、美亜が「…え?」と戸惑ったように声を漏らした。


「…忘れちゃった?入学式の次の日に私のこと助けてくれたじゃん」

「…ああ、こいつに突き飛ばされてた女だっけ。別に助けた覚えはないけど。そんなことより早く行くぞ」

「あ、うん…」


棗についていきながらチラリと美亜に視線を向けると、顔を歪めながら拳を強く握りしめ必死に怒りを堪えている様子だった。

よくわからないけど、結果的に美亜が傷ついたことに変わりはなく「ざまあみろ」と思っている私はやっぱり根からの悪女なのかもしれないとそう思った。