そしてポケットから絆創膏を取り出し、手に貼ってくれたのだ。

あの棗が、律儀に絆創膏まで。


「…ありがとう」


不思議に思いながらもお礼を伝えると、棗の手が一瞬だけぴくりと反応した。


「あんたもさっき引っ掻かれてたけど、怪我してないの?」

「…俺は平気だ」


なんだか貸しを一つ作ってしまった気分だけど、手当てをしてくれた棗の手は普段の冷酷王子である棗とは思えないほど優しく、少し意外だった。

それに、ムキになるほどネコが好きなんだということも知れた。


棗のことをもっと知ってみたいと、少しだけそう思った。