「おい、おまえのせいで逃げられ…」

「ふっ、あはは!」


堪えきれなくなり、思わず吹き出してしまう。


「やっぱり番長だよ。喧嘩してた私たちよりもはるかに強いもん。あーあ、せっかく好みのネコに出会えたのに逃げられちゃったじゃん」


笑いながら棗を見上げると、なぜか驚いたように少し目を見開いていた。

そこでハッと我に返る。


やばい、私今めっちゃ素で笑ってしまった…。

それにこんなに爆笑したのなんていつぶりだろう。


「ん、んんっ。チャイム鳴ったし、もう行く…」


わざとらしく咳払いをしてその場から立ち去ろうとすると、ふと棗に腕を掴まれた。


「…手、血が出てるけど」

「え?…あ、本当だ」


棗は私の腕を掴んだまま水道の前まで引っ張ってくると、優しく水で洗ってくれた。