ネコに向かって手を伸ばすけど、怖いのか全然こちらに来てくれない。

仕方がないから木に足をかけて少しだけ登り、再びネコに手を伸ばす。


「にゃあー」


やっと許容範囲になったのかネコはモソモソと動くと私の手に飛び乗ってきた。


「わ…っ、おも…」


見た目よりもずっと重いネコに驚くけどもう遅く、バランスを崩した私の体は真っ逆さまに落ちていく。

せめてネコだけは守らなくてはとぎゅっと手に力を込める。


…が、私の体は地面に落ちることなく誰かに抱き抱えられていた。


「…え?」


相変わらず鋭い瞳で睨んでいるかのように見つめてくる棗に、思わず驚いた声が飛び出る。

とりあえず何か話さなくてはと口を開こうとすると、腕に抱き抱えていたネコが「ふにゃあ」と小さく鳴き地面に降りた。

そして、棗の足にすりすりと擦り寄っていた。


「…あの、ありがとう。助けてくれて」