ゆっくりと目を開けると、笑顔を咲かせたヒロインが俺の顔を覗き込んでいた。


「ごめんね、待たせちゃって。和佳の代わりに出た委員会やっと終わったから、帰ろ」

「ふわあ、俺、寝てた?さっきまでは起きてた気がしたんだけど」

「ぐっすり、気持ちよさそうに寝てたよ。なんかいい夢でも見てたの?」

「夢…」


言われてみれば何か夢を見ていた気がするけど、思い出そうにも思い出せなかった。


「わかんないけど、いい夢見てた気がする」

「ええ?なにそれ。適当だなぁ」


クスクスと笑っている茉莉花の頭をそっと引き寄せて、可愛い桜色の唇に自分の唇を重ねる。


「ちょ、突然すぎるんだけど…!誰かに見られたらどうするの、恥ずかしいでしょ!」


赤い顔であわあわと慌てている茉莉花に、思わず吹き出す。

あんなに毎日泣いていた女の子が、今は眩しく笑ったり可愛く怒った顔をしたり、たくさんの顔を見せてくれるようになった。

俺は茉莉花のどんな表情でも世界で一番愛おしい。

俺だけの永遠のヒロイン。


「俺は今でも茉莉花のヒーロー?」

「はあ?当たり前でしょ。昔も今も、この先もずっと、私だけのヒーローでいてくれないと困る」


俺のヒロインは君で、君のヒーローは俺。

そんな幸せな物語をこれからもずっと君の隣で続けていこう。

俺たちの世界で一つだけのこの物語を…。