「紫。ここにいたのか」

「翡翠くんーー和装なんだね」

 男子はスーツだと思っていたけど、翡翠くんはーー袴だった。

「我が家の正装はこれだからな」

「おぉ、着物! 翡翠、よく似合ってるな」

 外国の方のあるある、なのかな?
 ルイくん、すごく目をキラキラさせて興奮してる。
 まさか、翡翠くんとルイくんが打ち解ける日がくるとは思わなかった。

「ありがとう」

 翡翠くんの笑顔も優しい。

「二人の邪魔をするワケにもいかないから、ボクはそろそろ他のお姫様達へ挨拶をしてくるよ」

 そう言うと、ルイくんは手をヒラヒラさせて女の子達のところへ向かった。
 ルイくんが女の子達のところへ行った瞬間、他の子達もぞろぞろと集まっている。
 すごい、めちゃくちゃモテてる。

「紫。前夜祭、楽しんでるか?」

「う、うーん。私、こういうみんなで盛り上がるところとか、実はそんなに……あっ。でも……! だからって、みんなの邪魔はしないよ? みんな、準備すごく頑張ってたから。私は、ひっそりと様の方でいられたら良いかなって」

 いつからか、人の心の声が聞こえにくくなった。
 でも、もう人のーー翡翠くんの顔色を伺って話そうとは思わない。