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数日後。
ボクは、改めて紫ちゃんとーー誰だっけ。紫ちゃんの婚約者を名乗る男に感謝を伝えた。
「良かったーー黄山くん。とても幸せそう」
紫ちゃんも自分のことのように、涙ぐみながも喜んでくれた。
本当ーーすごく良い子。
「良かったな」
そんなに感情豊かな彼女に比べ、その隣にいる男はーー全くの無表情。
「紫ちゃん、キミにはとても感謝してる。感謝しきれないほどに。そしてお前ーーえっと」
「緑谷 翡翠」
「翡翠ーーありがとう。そして、ごめん」
彼には、失礼な幾度となく失礼な態度で接してしまった。それにも関わらず、ボクを助けてくれた。良い奴だ。
「それはーー俺と正々堂々、紫の婚約者の座を奪い合う。そういつ決意表明か?」
無表情から、ギロリと鋭い眼光を向けてきた。
ーーコイツ、本気か?
「いや。ボクは、これまでの失礼を謝ってるつもりだけど」
散々、嫌味な態度を取ってしまったから。
「失礼ーーあぁ、俺のいないところで紫を口説いてた件か。たしかに、あれは許せない」
ーーダメだ、話にならない。
というか、どれだけ紫ちゃんのこと好きなんだよ。
紫ちゃんに助け舟を出してもらおうと彼女の顔を見たらーーあぁ、これはダメだ。
彼女ーー恋する乙女の顔をしている。
最初から、ボクが婚約者になれるスキなんてなかったんだろう。
完敗だ。

