「あぁ。黄山のことを調べていたら、彼が日本へやって来た理由が分かった」
「? えっと、私とーー婚約するためって言ってなかったっけ?」
転校初日に、あんな堂々と言ってたんだもん。忘れるわけがない。
「それもそうなんだが……その、“ウラ”というか。黄山側のメリットが分かったんだ」
政略結婚だもん。親同士が何か絡んでいるに違いない。
これは、私と翡翠くんの間にもあること。
「メリットって……?」
「妹さんの治療費だ」
「えっ……?」
翡翠くんの話によると、黄山くんのお母さんは、黄山くんのお父さんと結婚できなかったそう。身分の差というのがあるらしい。
黄山くんは、お母さんとフランスで暮らし始めた。その後、お母さんはフランスで出会った男の人と結婚。三歳年下の妹が誕生。
そして、裕福な家庭ではないが、幸せに暮らしていたらしい。そんな中、妹さんに高額な治療を受けないと治らない病気が見つかった。
それをどこから聞きつけたのか、黄山くんの本当のお父さんが妹の治療費を出すと言ってくれたそう。でも、タダでというわけにはいかなかった。
黄山くんが、私と婚約できたらという条件を付けた。
彼が毎日、私に甘い言葉を囁くのにはーー私を取引材料といったのには、こういう隠された秘密があったのだ。

