『そうか。それなら良かった』
「どうしたの……? 学校があった日に電話なんて、珍しいね?」
『ーー本当は、直接話したかったが帰ったと聞いて。いつも放課後は遅くまでみんなを手伝っているから、
いるものだと思っていた』
ーー知ってたんだ。
「あっ……き、今日はーー早く終わっちゃって」
黄山くんがみんなを手伝ってるから、私はやることがなかったなんてーー言えない。
『……そうか』
良かった、深入りされなくて。
ホッと安心したところで、何だかちょっと勇気が出て来た。
なんとなく、今なら言えそうな気がした。
「あの、翡翠くん……!」
『どうした?』
「私ーー翡翠くんのことが」
『待て』
「へ?」
え……どうして?
今なら言えそうな気がしたのにっ。
『今、外に出られる格好か?』
「え? うん……制服だから」
『そうか。それなら、カーテンを開けてくれないか?』
「? う、うん……?」
……え?
どうしてカーテンを?
そんなことを思いながらもカーテンを開けるとーー。
「ひ、翡翠くん!?」
中庭には、翡翠くんと畠山さんがいた。窓を開けると、電話は繋いだまま、彼が電話よりも大きな声を出した。

