「ーーお前か、紫ちゃんの婚約者候補というのは」

 ワントーン低い声でじっと翡翠くんを見る黄山くん。

「だったら何だ?」

 負けじと鋭く睨み返す翡翠くん。
 二人の間には見えない火花が散ってる……?

「ひ、翡翠くん……! は、早く行かないとっ。その、休み時間が……」

 なんとか場を収めないと……!
 そう思って、言ったけどカミカミになっちゃった……。

「……そうだな」

「待て。まだ話は終わってない」

「あ、あのっ。翡翠くんに手伝ってもらっているのに、授業に遅れるわけにはいかないから」

「あぁ、ごめんね。つい感情的になってしまい、紫ちゃんの気持ちを蔑ろにするところだった。ーーお前が紫ちゃんと一緒にいるのは気に入らないが、紫ちゃんのためだからな」

 私に対しては、ニコニコと笑顔を浮かべ、翡翠くんには厳しい顔をしてる。
 でも、話をしたら分かってくれる人でよかった。

 そんなことを思い、ながら私と翡翠くんは職員室に向かってるんだけどーー。

「……翡翠くん?」

 ものすっごい怖い顔をしている。
 わ、私のせいだ……。
 眉間のシワも、目つきも……いつもと違う。