と、翡翠くんが黄山くんの手を掴んでいた。
ノートの山を片手で持って。
「ボク、男と手を繋ぐ趣味はないんだけど?」
「それは俺もだ」
「なら、離してくれないか?」
「……紫に余計なことするなよ」
そう言って、黄山くんの手を離した。
「ボク、転校初日に言ったよね? 紫ちゃんのフィアンセだって。いずれ結婚する仲の相手に近付きたいというのは、当然のことじゃないかい?」
掴まれた手と翡翠くんの顔を交互に見て、うんざりした顔で言う黄山くん。
「ーーたしかに。それは、俺も思う」
「だろ? なら、キミが邪魔する権利はないわけだ」
翡翠くんが頷き、勝ち誇った顔をする彼。再び彼が私の方を向くと、彼と私の間に翡翠くんの手が入った。
「俺も紫の婚約者候補の一人だ。だから、お前に好き勝手させたくない」
そう言うと、クラス中の注目が教卓前にいる私たちに集まった。
「えっ!? 村崎さんと緑谷くんって、そういう関係だったの?」
「まさか、あの二人が……」
「たしかに。二人、名前で呼び合ってるし……」
秘密にしていたわけではないけれど、クラスメイト達にわざわざ言う事でもなかった。だから、黙っていたらみんなすごく驚いていた。

