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【緑谷翡翠side】
俺が勝ったとしても、負けたとしてもーー全員、どうでも良いだろう。既に、全国大会への切符は手に入れている。外よりも室内の方が気温が高く、仲間の集中力も切れている。体調不良の者も出るかもしれない。
もう、この試合ーー俺は。
弱気になっていた時、一筋の光が差し込んだ。
「村崎……?」
俺の弱気に、活気を差し込んだのはーーやはり彼女。姿は見えないけれど、聞き間違えるはずがない。愛しいキミの声。
村崎は、どうしてこれほど俺に力をくれるのだろう。
「緑谷。よそ見とは、余裕だな」
対戦相手、鹿島さんが呆れたように言った。今は試合中。集中しなければならない。相手にも失礼だ。
「すみません。集中し直します。そして、俺ーー鹿島さんに勝ちます」
「ふん。女の応援ごときで、この状況が覆せるものか。それにお前ーー一度も俺に勝てたことがないだろ」
ごとき。
彼女を想う気持ちがない奴にとって、彼女の応援はその程度ということになってしまう。
だが、その言葉は彼女を否定されたような気がして【絶対に勝つ】という熱い気持ちが完全に復活した。

