「プールなのに、申し訳ないがーー泳ぐ時以外はコレを羽織ってくれないか」
そう言って肩にかけられたものの正体は、パーカー。しかも、これってーーつい今まで緑谷くんが羽織ってたやつ……!
「えっ。で、でもーーこれじゃあ、緑谷くんが」
「俺のことは気にしなくて良いから」
と、ふいっと顔をそらしたまま言われた。
「ーー少し歩くか。この辺りは、プールばかりだが少し向こうに行くと」
歩くと、プールなのに塩素系の薬剤の匂いから磯の香りがし始めた。
足元には、白い砂浜。これってーー。
「海?」
「あぁ。療養の患者として、サーファーもいるから。実際の海だと危ないこともあるそうだ」
「そうなんだ」
歩きながら話していると、足が自然と波の方へ向かった。近付きすぎて足に波がかかった。
「つめたっ」
「!? 温度調整が甘いか……? 少し、水温を上げてもらうか」
「ううん。そんなことない。いきなり水がかかったから、びっくりして」
「そうか。それならよかった」
何度か波を受けると、冷たさが心地良くなってきた。
「ふふ、気持ち良い。海って良いよね」
「ーーそうだな」
(村崎は海が好きなんだな。次は、海に行こう)
なんて、こっそりと計画してくれてる。

