「び、びっくりしたよね……! まさか、その……こ、婚約、っていうの? そんなの、まだ先の話だと思ってて……! それに、そういうのに……その、クラスメイトの」
そう。
実は、彼とは同じ学校に通っていている上に、クラスメイト。
同じ学校に通っているということを切り口に、話を広げようとした。
あんまり話したことがないから、緊張しているからか顔に熱が集まる。身体中が、ポカポカする。脈が上がってるのが分かり、なんだか頭もズキズキしてる気がする。
ーーうぅ、緊張でうまく話せないよ。
「村崎」
しかし、会話は彼に遮られてしまった。
「う、うん。どうしたの?」
名前を呼ばれたのは、初めてのこと。
ぎこちなく返すと、彼は目を伏せた。
「無理に話すな」
「……え?」
私が頑張ろうとしてたのが分かったーーと、いうこと?
ーーたしかに、気持ち良くはないと思う。
私が、頑張ろうと思ったのは家のため。彼自身を見て、ずっと好きだったとか……そういうのじゃない。お互いのーーいや、私の場合自分の家の為に彼に取り入ろうとしている。
それが、彼にとって面白いわけがない。
私だってそう。【村崎家の人間】という枠で私を評価されることはあっても、私自身を見られることなんてない。どんなに頑張っても、【流石は村崎家のご令嬢】としか言われない。
私ーー自分から嫌なことしてる。

