♡♡♡
数時間経過し、日が傾き始めた。客間から紙を持って部屋へ戻った。まだ、緑谷くんへ連絡はできていない。スマホの画面は何度も、電話番号を打つところまでいき、番号を入力している。
しかし、最後ーーコールボタンを押せない。
私の答えは、決まっているのに。
「っ、きっと……もう出ないだろうからっ」
電話をして欲しいと言われて数時間。もう、彼は出ないはず。三コールだけ鳴らして、出なかったら切ろう。きっと、折り返しかけてくれるはず。そう思い、電話をかけると。
『はい、緑谷です』
「っ!?」
で、出た……! それにしても、出るの早すぎじゃない!? まだ、一コールも終わってなかったよ……?
『……あの』
びっくりし過ぎて声が出ずにいたら、不審そうにしてる彼。
「あ、ご、ごめんなさい……え、えと。私、村崎と申します。翡翠くんはいらっしゃいますか……!」
『ふっ。俺のスマホなんだから、俺しか出ない』
それはそう。緊張し過ぎて、家に電話をかける時みたいなことしちゃった……!
「そ、そうだよね……! ごめん」
『謝らなくていい。俺が、電話をかけるよう言ったんだ。こちらから向かったのに、半端な事をして悪かった』
電話はほんと、緊張するよ……!

