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 数時間経過し、日が傾き始めた。客間から紙を持って部屋へ戻った。まだ、緑谷くんへ連絡はできていない。スマホの画面は何度も、電話番号を打つところまでいき、番号を入力している。
 しかし、最後ーーコールボタンを押せない。
 私の答えは、決まっているのに。

「っ、きっと……もう出ないだろうからっ」

 電話をして欲しいと言われて数時間。もう、彼は出ないはず。三コールだけ鳴らして、出なかったら切ろう。きっと、折り返しかけてくれるはず。そう思い、電話をかけると。

『はい、緑谷です』

「っ!?」

 で、出た……! それにしても、出るの早すぎじゃない!? まだ、一コールも終わってなかったよ……?

『……あの』

 びっくりし過ぎて声が出ずにいたら、不審そうにしてる彼。

「あ、ご、ごめんなさい……え、えと。私、村崎と申します。翡翠くんはいらっしゃいますか……!」

『ふっ。俺のスマホなんだから、俺しか出ない』

 それはそう。緊張し過ぎて、家に電話をかける時みたいなことしちゃった……!

「そ、そうだよね……! ごめん」

『謝らなくていい。俺が、電話をかけるよう言ったんだ。こちらから向かったのに、半端な事をして悪かった』

 電話はほんと、緊張するよ……!