「な、なんでしょう……!」

 緑谷くんの表情は固く、客間に緊張が走った。ドキドキしながら答えると、彼はキッと鋭い目つきで私を見てる。

 えっ!? な、なに……? なんで私、睨まれてるの……?

「い……一週間後。空いているだろうか」

「……へ? 一週間後……? あっ、うん。その日は特に予定はないけど……?」

 何だろう……?
 そう思い、こてんと首を傾げた。

「俺に、午後からーー村崎が時間を許す限り、俺と過ごしてくれないか」

「へ……? そ、それって」

 いわゆる、デート……というもの?
 そう聞き返そうとしたが、彼は私に四つ折りにした紙を渡した。

「今、返事をもらう余裕はない。だからーー後で。いや、いつでも良い。電話が貰いたい」

 そう言うと、緑谷くんは「お茶、美味かった。ご馳走様」と早口で言い、客間から出て行った。

 四つ折りの紙を開くと、電話番号と彼のフルネームが書いてあった。
 緑谷くん、字綺麗だなぁ……じゃなくて!

 これって、私ーー電話するってこと、だよね?
 そっちの方が全然緊張するんだけど……!
 うぅ、さっき私の答えを聞いてくれたら良かったのに。