「どうした?」

「ご、ごめんね。大きな声を出して……」

 誤魔化しながら言い、これ以上一緒にいたらボロが出ちゃいそう。
 あっという間に空になったタッパーを慌てて片付け、風呂敷で包んだ。

「そ、それじゃあ……! 私……そろそろ行くねっ」

「待て」

「っ!?」

 早く撤退したかったのだが、彼に引き止められてしまいピクリと止まった。
 さっきのサッカー部の人へ向けた鋭い眼光で私をじっと見て離さない。

 え、えっとーー?

「村崎に聞きたいことがある」

「えっ……? ええっと……?」

「何故、ボールが来ると分かった?」

 少ない言葉だが、私の言葉が詰まるのには十分だった。
 ここは、何とかして誤魔化さなきゃ……!

「え、えぇっと……あっ、ほら! 危ないって!」

「? それは、誰が?」

「えっ……? 緑谷くん、がーーっ!」

 そう、たしかに言ったのは彼。
 でも、彼が言ったのは心の中(・・・)での話。慌てて口元を押さえた時には、遅かった。

「村崎、まさかーーいや、なんでもない」
(村崎の後ろからボールが飛んできたんだから、見えるはずがない。たしかに、俺は危ないと言いたかったがーーレモンを食べていた。俺が言おうとした……いや、思ってた事が伝わった? でも、そんなこと……)

 彼の中で完結しかかっていたが、私はこれ以上は無理と思い口を開いた。