「すみませーん! 大丈夫ですか!?」

 パシュッと音がして顔を上げると、緑谷くんがサッカーボールを片手で受け止めていた。

 ーー避けてなかったら、後頭部にサッカーボールが当たってて、危なかった。
 そう思うと、心臓がバクバクと早くなった。

「危ないだろ」
(もう少しで村崎に当たっている所だった。もし、村崎に怪我でも負わせやがったらーー俺は絶対に許せなかった)

 ギロリと鋭い眼光で睨むと、サッカー部員に荒々しくボールを放った。部員は肩をビクリと上げ、足早に去ってしまった。

「大丈夫か?」

「う、うん。私は……緑谷くんはーーっ!」

 彼に問いかけ、彼の手を見ると赤くなっている事に気付き、思わず手をよく見るため優しく触れた。

「大変っ。緑谷くんーー怪我、してる……?」

 手を柔く握り、不安に見て彼の顔を見るとーー固まっていた。

「緑谷くん……?」

「何でもない。あまり気安く触れるな」
(手を握ってくるなんて。何て大胆なことをーー愛おしい。もし今、抱きしめたら嫌われるだろうか)

「へっ!?」

 私が大きな声を出すと、珍しく彼が驚いた表情を浮かべた。

 でも、抱きしめたらってーーそ、そんな!