「どうぞ」
開けたタッパーを彼に差し出すと、タッパーを挟んだ隣に彼が座った。
「ーー頂く」
そう言うと、タッパーに手を入れ輪切りのレモンを一つ摘んで口に運ぶと、無表情だったが目を少し見開いた。
「……美味い」
(物凄く美味い。村崎には、料理の才能があるんだろう。蜂蜜が足りずレモンが酸っぱすぎることも、蜂蜜で甘ったるすぎることもない。一つ食べただけでも、スッと疲れが抜けていってる気がする)
心の中で私を褒めてくれる。しかも、過剰な程に。その後も、二つ、三つと勢い良く輪切りのレモンをパクパクと口に運んだ。
彼の内情は、あまりにも大袈裟で思わず「ふふっ」と笑みが溢れた。
突然笑い出した私に、彼が首を傾げた。
「何だ?」
(がっつきすぎたか? もしかしてこれは、全て俺に宛てた物ではなく、食い過ぎた?)
「ううん、なんでもないの」
さすがに、大袈裟だと言えば食べてもらえなくなるかもしれない。
会話はなくても、勝手にーー本当に、すごく勝手だとは思うけれど少し仲良くなれた気がした。
そう思い、彼が食べ進めて数分経った頃。パッと顔を上げると、私の方に手を伸ばした。
ーーえ、えっ!? な、なに……?
(危ないっ! 頭下げろ!)
緑谷くんの心の声が聞こえ、反射的に前傾体制になって頭を下げた。

