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 三日後。
 結局、問題ないと思っていたが大事をとって二日も学校を休んだ。でも、昨日は体調に問題がなく退屈だった。

 それに、学校を休んだ私にクラスや先生の仕事を任されることもなかった。これほど時間があることはこれまでになく、色々と考えていた。
 考えの中で一番比率を占めていたのは、私を病院まで手配してくれた緑谷くんへのお礼。
 緑谷くんと話したのは、婚約者候補として紹介された時と教室と保健室でちょっとだけ。彼が、何が好きで、何で喜んでくれるのか全く分からない。

 でも、彼が空手部に所属している事は知っている。そして、空手部は朝も放課後も練習がある。朝練で差し入れをするのは、どうだろう。

 ーー喜んでもらえる、かな。

 そう思い、私はレモンの蜂蜜漬けを作った。お気に入りの花柄の風呂敷に包み、持ってきた。
 そして、今ーー私は武道場の前でウロウロしている。空手部が練習している事は知っているけれど、空手部に知り合いはいない。

 持ってきたは良いけど……そもそも、部活への差し入れって大丈夫なの……?
 やっぱり、迷惑をかけちゃうんじゃ……あぁっ、何で昨日その可能性について思いつかなかったんだろ。

 ーーでも、せっかく作ったし……!

 ごくりと生唾を飲み込み、覚悟を決めて武道場の扉を開けた。