「今後なのですが、翡翠くんはいつからウチへ来てくれるのでしょう?」

 父がそう尋ねると、翡翠くんのお父さんが顎に手を添えた。

「そうですな……翡翠。お前の考えを述べてみろ」

 考えた結果、彼に決定を委ねた。少し驚いた表情を浮かべたが、すぐにこくりと頷いた。

「ーー分かりました」

 そう言うと、彼は真面目な顔をして立ち上がった。

「十年、お時間を頂きたく思います。それまでに、将来の経営の主力となれるように村崎家の家業の知識、経験を積み、紫さんに釣り合う男になってみせます」

 冷静な口調で頼もしく、そこまで考えてくれている彼の誠実さを嬉しく思った。

 しかし、私達の両親の表情は険しかった。

「……未熟でしょうか? 考えが甘いようでしたら、もう一度、練り直します」

「翡翠。十年後は、紫さんと婚姻関係にある。そうではなく、お前が村崎家へ行くタイミングだ」

「? 十年後ーーではないのですか?」

 翡翠くんも眉間にシワを寄せ、小首を傾げた。私も言われていることがよく分からなかった。お互いの顔を見合わせても、私達は首を傾げたままだった。

 話が進まずにいると、父が「あぁ!」と一人納得した様子で声を上げた。