レッスンを終えた律歌は、ふぅっと小さく息を吐いた。
奏希さんの隣でピアノを弾く時間。最初は緊張していたものの、次第にその空間が心地よくなっていた。
「今日はこの辺で終わりにしようか」
奏希さんがちらりと時計を見て言う。
律歌もつられて目を向けると、思っていた以上に時間が経っていて驚いた。
「もうこんな時間……」
集中していたせいか、あっという間だった。
「それだけ夢中になれてたってことだね」
奏希さんがどこか嬉しそうに微笑む。
その笑顔に、律歌の胸がふわりと高鳴った。
「……ありがとう、奏希さん。私なんかにピアノを教えてくれて」
素直に礼を言うと、奏希さんは少し驚いたように目を瞬かせた。
「……そんな顔しないで。僕はただ、君に才能があるから教えてるだけ」
「才能……?」
「そう。君のピアノには、人の心を動かす力がある。それは誰にでもできることじゃない」
「……」
そんなふうに言われたのは、初めてだった。
ずっと自分のピアノなんて価値がないと思っていたのに、奏希さんは違った。
「まぁ、まだまだ課題は山積みだけどね。次回のレッスンも気合入れよう!」
そう言って、奏希さんは軽くウインクする。
(次回……)
その言葉が、じんわりと胸に染みた。
「うん……!よろしくお願いします!」
思わず笑顔で返事をすると、奏希さんは満足そうに頷く。
「じゃあ、そろそろ送るよ。暗くなってきたし」
「え、でも……!」
「いいから。ピアノの生徒をちゃんと家まで送り届けるのも、先生の役目じゃない?」
律歌は戸惑いながらも、その優しさに甘えることにした。
奏希さんと並んで歩く帰り道。
まだ、彼の隣にいることに慣れないけれど。
それでも――。
今、この時間がどこか温かく感じられた。
奏希さんの隣でピアノを弾く時間。最初は緊張していたものの、次第にその空間が心地よくなっていた。
「今日はこの辺で終わりにしようか」
奏希さんがちらりと時計を見て言う。
律歌もつられて目を向けると、思っていた以上に時間が経っていて驚いた。
「もうこんな時間……」
集中していたせいか、あっという間だった。
「それだけ夢中になれてたってことだね」
奏希さんがどこか嬉しそうに微笑む。
その笑顔に、律歌の胸がふわりと高鳴った。
「……ありがとう、奏希さん。私なんかにピアノを教えてくれて」
素直に礼を言うと、奏希さんは少し驚いたように目を瞬かせた。
「……そんな顔しないで。僕はただ、君に才能があるから教えてるだけ」
「才能……?」
「そう。君のピアノには、人の心を動かす力がある。それは誰にでもできることじゃない」
「……」
そんなふうに言われたのは、初めてだった。
ずっと自分のピアノなんて価値がないと思っていたのに、奏希さんは違った。
「まぁ、まだまだ課題は山積みだけどね。次回のレッスンも気合入れよう!」
そう言って、奏希さんは軽くウインクする。
(次回……)
その言葉が、じんわりと胸に染みた。
「うん……!よろしくお願いします!」
思わず笑顔で返事をすると、奏希さんは満足そうに頷く。
「じゃあ、そろそろ送るよ。暗くなってきたし」
「え、でも……!」
「いいから。ピアノの生徒をちゃんと家まで送り届けるのも、先生の役目じゃない?」
律歌は戸惑いながらも、その優しさに甘えることにした。
奏希さんと並んで歩く帰り道。
まだ、彼の隣にいることに慣れないけれど。
それでも――。
今、この時間がどこか温かく感じられた。



