二人の視界いっぱいに黄金の花々が咲き誇っていた。
目の前に広がるのは、向日葵畑だった。
紗理奈は背の高い向日葵に向かって駆ける。
後を追ってきた近江がポツリと呟いた。
「ああ、すごく綺麗だな」
振り返ると、近江が口元を綻ばせていた。
「そうですね、向日葵、すごく綺麗ですね」
「俺が言ったのはだな……」
「?」
「いいや、何でもないよ……」
近江はそれだけ言うと、紗理奈の隣に立った。
紗理奈からすると背の高い向日葵も、近江の身長の高さには叶わないようだ。
ふと、彼がスーツのポケットの中から何かを取り出した。
「堂本紗理奈、これを」
「これはなんですか?」
彼の掌の上には黒い小さな箱。
ドクンドクン。
心臓が幸せなリズムを脈打つ。
彼がもう片方の手でそっと開く。
中に入っていたのは……
「わあ、綺麗!」
太陽に負けず劣らず美しいダイヤモンドの指輪だった。
「向日葵の花のように明るくて快活で、このダイヤモンドのように意思の固い君にこれを」
近江にしてはかなり気障な台詞だったので、紗理奈の胸がむずがゆくなってくる。
それ以上に、嬉しくて仕方がなかった。
彼女の左手の薬指に、彼がダイヤモンドの指輪を通した。
「これからも陽太の代わり……いいや、それ以上に君を大事にする」
「近江さん」
紗理奈の瞳から一滴の涙が零れる。
そんな彼女の頬へと、彼の長い指がそっと触れる。
「好きだ。これから先も俺とずっと一緒にいてほしい、紗理奈」
「私もです、近江さん……いいえ、圭一さん」
そうして、彼の顔が彼女の顔にゆっくりと近づく。
向日葵の下、二人の影が重なった。
期間限定から本当の恋人同士になった二人の前には、これから先、幸せな未来が待っているだろう。
(おしまい)


