「ご婦人、こちらを」
「ああ、ありがとうございます! 死んだ旦那からもらった大事なお守りが入っていたんですよ!」
近江からハンドバッグを受け取った老婆は歓喜に満ちていた。
(良かった)
紗理奈が口元を綻ばせていると、近江がすまなさそうに声をかけてくる。
「堂本紗理奈、この後一緒に出掛けようと話していたが、すまない、少しだけ事情を説明してくる」
「いいえ、今日は仕方ありません。そうだ、今回の近江さんの件、記事にしても良いですか?」
「そうだな、あまり目立ちたくはないが……構わない。もうマンションは目の前だから、俺が一緒について来なくても良いだろう」
「ええ、さすがに玄関先なので大丈夫ですよ」
「そうか。では行ってくる。また後日、別の場所へと向かおう」
「分かりました」
近江が仲間たちの元へと駆けていく背中を、紗理奈は目で追う。
その日、せっかくの初デートというべきかお出かけは、まさかの現行犯逮捕に置き換わってしまったけれど――帰宅してから、紗理奈は近江のお手柄の記事を手がけてWEBで発信したおかげで、警視庁内での評価が上がったようだった。
そうして――後日、初デートのやり直しに向かうのだけれど……そこで近江さんと私の距離がぐっと近づくことになるなんて、この時の私は想像もしていなかったのでした。
「ああ、ありがとうございます! 死んだ旦那からもらった大事なお守りが入っていたんですよ!」
近江からハンドバッグを受け取った老婆は歓喜に満ちていた。
(良かった)
紗理奈が口元を綻ばせていると、近江がすまなさそうに声をかけてくる。
「堂本紗理奈、この後一緒に出掛けようと話していたが、すまない、少しだけ事情を説明してくる」
「いいえ、今日は仕方ありません。そうだ、今回の近江さんの件、記事にしても良いですか?」
「そうだな、あまり目立ちたくはないが……構わない。もうマンションは目の前だから、俺が一緒について来なくても良いだろう」
「ええ、さすがに玄関先なので大丈夫ですよ」
「そうか。では行ってくる。また後日、別の場所へと向かおう」
「分かりました」
近江が仲間たちの元へと駆けていく背中を、紗理奈は目で追う。
その日、せっかくの初デートというべきかお出かけは、まさかの現行犯逮捕に置き換わってしまったけれど――帰宅してから、紗理奈は近江のお手柄の記事を手がけてWEBで発信したおかげで、警視庁内での評価が上がったようだった。
そうして――後日、初デートのやり直しに向かうのだけれど……そこで近江さんと私の距離がぐっと近づくことになるなんて、この時の私は想像もしていなかったのでした。


