六年前、紗理奈が高校生の頃。
警察学校に入ってしばらくした頃の兄が一時帰省した際。
夕ご飯を一緒に平らげていた時の出来事だ。
もぐもぐと大盛りの白ご飯を食べ終わった兄が、快活な笑顔を浮かべた。
『紗理奈、兄ちゃんな、警察になって友達が出来たんだ』
『この間、話していた冷たい感じの人? それとも女の人?』
『冷たい感じの人の方だ』
『熱血漢のお兄ちゃんのお友達ってことは、似ている感じのタイプの人なの? 冷たいのはなんだか違う気がするんだけれど』
紗理奈が味噌汁を啜りながら返事をすると、兄は白い歯を輝かせながら返事をしてきた。
『そうだな、無表情な感じだが、日本の安全のために熱い男だ』
『ふうん、熱いってお兄ちゃんぐらい?』
『いいや、そうだな、むしろ俺よりも熱いかもしれない!』
『お兄ちゃんよりも熱い男!?』
『ああ、今度、お前にも紹介するよ!』
意気揚々と語ってみせた兄。
彼が嬉しそうだったから、妹の紗理奈もなんだか釣られて嬉しくなった。
『今度ぜひ紹介してちょうだいね、お兄ちゃん』
『ああ、あと綺麗な婦警の方もな』
『楽しみ!』
だけど。
兄が親友を紹介してくれる日は永遠に来なかったのだった。


