すべてはあの花のために①


「よってだ! だから生徒会メンバーは、もうそんなことはしなかったっていうのがオレの考えだ」


 にかって、いつも通り笑ったつもりなのだろう。でも、全然笑えてない。寧ろ……。


「(苦しそうなのは、自分のことだから? それとも……)」


 踏み込んでもいいだろうか。そこの判断がわからない。確証もない。


「――チカくん」


 でも、このままっていうのも性に合わないっ!


「?! な、なんだよ」


 勢いよく立ち上がったせいか。迷いのない声に驚いたのか。呼ばれた彼は肩をビクッと大きく揺らす。


「君は、…………君は」


 けれど、真っ直ぐな葵の瞳に、じっと言葉を待った。


「……君は、そんな君が考える生徒会のメンバーなのか」

「――――」


 彼は、瞳を大きく見開いたまま固まってしまった。


「(や、やっぱり、踏み込んだのは間違いだったかな。そうだよね。友達と言っても、そこまで近付く必要ないもんねー……!)」


 そんなことを考えながらも真剣な顔は崩さない葵は、彼からピクリとも視線は外さない。

 すると彼が、「……ぶっ、はははっ!」と急に笑い出した。『何事?!』と、笑われた要素を探していると、目の前の彼は、なんだか嬉しそうにしていた。


「(この感じ、どっかで……)」


 そういえば最近、似たようなことがあったな。


「おまっ、……そんなこと、ふつうきく……?」


 盛大に笑われながらも、彼は確かにそう言った。



「や、やっぱり聞いちゃ不味かったよね。ごめん!」


 笑ってはいたれど、彼は言うつもりがなさそうだった。だから謝ったが、「でも」と葵はそれからまた続ける。


「ごめんねチカくん。そこまでは聞いちゃいけなかったね」

「ん?」

「だから、言い方を変えるよ」

「…………」

「ねえチカくん。どうしてそんなに苦しそうなの。わたしはチカくんの友達だから、とっても心配なんだ」


 同じようで違う問いに、チカゼは一度笑うのを止める。



「……お前、本当すげーな」


 けれど、彼はやわらかく笑いながら、両手を上げて降参の意思を示した。


「そんな言い方されたら、話してやらないとって気にさせられる」


 また「ははっ」と笑っている。

 彼は、本当によく笑う。本当に笑顔が似合う。それを見ているだけで、なんだか胸が温かい。