すべてはあの花のために①


 ……そして、すべて聞き終えた葵の顔は、真っ青になった。


「……そして就職難に遭い、路頭に迷った挙げ句、恋人にも逃げられ、貯金も果たし、在らぬ罪を負わされて、最終的に警察に追われる羽目になる……だと?」


 どうして。どうしてこんな、不幸ばっかり起こってしまうんだ。
 後半は、全然現実味がないのにっ。初めの足の小指のせいで、リアル感増し増しだよお。

 ……取り敢えず、ぶつけないようにしよう。実際、かなり痛いしね。


「もしかしてさ、そのジンクスも、玉の輿のやつみたいに実際起こったとか。まさか、そんなんじゃないよね……?」

「………………あったんだ」


 マジかい! そりゃ怖いわ!
 別に信じてるわけじゃないし、そもそも信じたくはないけど、もしそうなったら……って思うわね!?

 きっと、チカゼもその一人なのだろう。今はもうぐったりだ。


「……あ」


 でもさ。


「もし、その生徒会メンバー同士で奪取し合ったらどうするの?」

「ん? どういうことだよ」

「例えばの話だけど、生徒会の中で想い人がいたら、その人のネクタイかリボン欲しい! ……ってなるんじゃないの?」

「そ、れは……」


 ん? あれ? 言うの渋っちゃった。
 何かおかしなこと聞いたかな?
 メンバー内だなんて、有り得そうな話じゃないの?


「……まず、Sクラスになる条件は」

「せ、成績優秀者?」

「他に」

「家柄がいい人?」

「その時点で結構絞られてる。生徒会に選ばれるのは、その中でもトップクラスの奴らばっかだ」

「成績とか、家柄とか?」

「もちろん投票数で変わったりするだろうけど、基本“そういう奴ら”が生徒会に選ばれやすい」


「だから」と呟いたチカゼは、あまり口に出したくないのか。グーパーグーパーを繰り返している、胡座の中の両手へと、視線を落とし……。


「……だから、もう生徒会に選ばれるような奴には、相手がもういるんじゃなかったのかってことだ」


 ――望んでもいない相手が。

 最後にどこか遠くを見つめ、彼は言外にそう含ませた。



「……そうか」


【政略結婚】
 それは、この学校に通う誰しもが有り得ることだ。