……そして、すべて聞き終えた葵の顔は、真っ青になった。
「……そして就職難に遭い、路頭に迷った挙げ句、恋人にも逃げられ、貯金も果たし、在らぬ罪を負わされて、最終的に警察に追われる羽目になる……だと?」
どうして。どうしてこんな、不幸ばっかり起こってしまうんだ。
後半は、全然現実味がないのにっ。初めの足の小指のせいで、リアル感増し増しだよお。
……取り敢えず、ぶつけないようにしよう。実際、かなり痛いしね。
「もしかしてさ、そのジンクスも、玉の輿のやつみたいに実際起こったとか。まさか、そんなんじゃないよね……?」
「………………あったんだ」
マジかい! そりゃ怖いわ!
別に信じてるわけじゃないし、そもそも信じたくはないけど、もしそうなったら……って思うわね!?
きっと、チカゼもその一人なのだろう。今はもうぐったりだ。
「……あ」
でもさ。
「もし、その生徒会メンバー同士で奪取し合ったらどうするの?」
「ん? どういうことだよ」
「例えばの話だけど、生徒会の中で想い人がいたら、その人のネクタイかリボン欲しい! ……ってなるんじゃないの?」
「そ、れは……」
ん? あれ? 言うの渋っちゃった。
何かおかしなこと聞いたかな?
メンバー内だなんて、有り得そうな話じゃないの?
「……まず、Sクラスになる条件は」
「せ、成績優秀者?」
「他に」
「家柄がいい人?」
「その時点で結構絞られてる。生徒会に選ばれるのは、その中でもトップクラスの奴らばっかだ」
「成績とか、家柄とか?」
「もちろん投票数で変わったりするだろうけど、基本“そういう奴ら”が生徒会に選ばれやすい」
「だから」と呟いたチカゼは、あまり口に出したくないのか。グーパーグーパーを繰り返している、胡座の中の両手へと、視線を落とし……。
「……だから、もう生徒会に選ばれるような奴には、相手がもういるんじゃなかったのかってことだ」
――望んでもいない相手が。
最後にどこか遠くを見つめ、彼は言外にそう含ませた。
「……そうか」
【政略結婚】
それは、この学校に通う誰しもが有り得ることだ。



