「待ってくださーい!!」
「お待ちになってー!!」
「(ぬああっ!?!?)」
なんだ!? 生徒全員がめちゃくちゃ走ってるし! しかも――――
「(追いかけられてるうー!?!?)」
葵はわけがわからないまま、追ってくる人たちの形相が途轍もなく必死すぎて怖くなり、取り敢えずダッシュで逃げる。
「(じゅ、授業はいいんですかー!?)」
((そんなことよりも! 早く逃げないと捕まっちゃうよ! なんか、捕まったら殺されそうだし))
「(ひ、ひとまず逃げるしかない……!)」
自分の命を優先し、疑問が残ったまま葵は校内中を駆けずり回ることに。葵は必死で逃げるも、撒いたと思えば新しい生徒が湧いて出てくるので、今はもう半泣き状態。
「(こっ、殺されるよー……っ)」
只管逃げていたら、いつの間にか体育倉庫まで来ていた。
――うん。ひとまずあそこに逃げ込もうっ。
と思ったら、中からひょこっとチカゼの顔が。
「ぢがぐーん!!」
「うわっ?!」
もう、何が何だかわからな過ぎてパニックに陥っていた葵は、それはそれはもう思い切り彼に飛びついたのだった。
どんがらガッシャンッ!
元々運動神経抜群な二人。上手にマットの上に乗ったが、飛び込んだ時にいろんなとこにぶつけたらしく、授業で使う道具たちが大きな音を立てて散乱してしまった。
「(いった――……く、ない……?)」
目を開けると、葵はチカゼに守られるように、抱き締められた状態で完全に彼の上に乗っかってしまっていた。
「いっ、てえー……」
「ちっ、チカくん! ごめんよ!? 大丈夫か……?」
「大丈夫なわけあるか! オレの賢い頭がお前みたいにバカになってくれたらどうしてくれるんだ!」
「……もうすでに手遅れだと」
「うっせえ」
いやいや、本当に心から申し訳ないと思っているのですよ。
おかげで安心安心。すっかり涙はどこへやらだ。
「と、ところでチカくん。わたしは何故こんなに追いかけられてるのかね? もしかしてチカくんもここに隠れてたりするのかい?」
「……お前、そんなことも知らないでここまで来たのかよ」
バカにした目で葵を見てくるチカゼ。
だって、知らないんだもん。しょうがないじゃんかー。バカは死んでも治んないんだよお。
「わたしが編入生って知ってるでしょ? 去年来た時には生徒会決まってたんだから。さあほら! 説明を求む!」
「な、なんでオレなんだよ」
「ここに君がいるからだ! そしてわたしに捕まったからだ! しょうがない! 諦めろっ!」
「い、意味わかん――……っ?!」
何としてでも聞き出そうとする葵の勢いは止まることを知らず。とんと、いつの間にか壁際まで追い詰められていたチカゼの両側に手が突かれ、彼は完全に逃げ場を失った。
……てか、え? 所謂これって壁ドンじゃね?
それ、女の子がやって意味ある――――……ん?
「…………………………っ、くそ」
意味あるのかなって思ったけど、やられてる側の表情が可愛いからよし。葵さん、グッジョブでっせ。
「? チカくん?」
「な?! ……なんだよ」
本当、どこまで赤くなるんだね君の顔は。
嬉しいのかな? 恥ずかしいのかな??
そんな様子もここが薄暗いため、葵は気付いていないのだけど。そうじゃなかったら、今頃君、大変なことになってたよ。ほら、葵さん。根っからの可愛い物好きだからさ。



