「はあ……で? これからどうするの。ていうか理事長は知ってるんだっけ」
「うん。道明寺のことも、ついでに“わたし”のことも。学校で知ってる唯一の人だ」
これからどうしていくのか。彼らは、真剣に話し始めることにした。
「そう。理事長は、知っている側の人間ね。てか、知ってるなら普通気を利かせるもんじゃない?」
「理事長と生徒会の一人がいとこ同士でね、その子から直々に頼まれたんだ」
「それだけが理由なら、海棠は今夜中にでも地に落ちるね」
「シント。わたしはさ、理事長の願いを、どうしてもやり遂げたいんだよ」
「願い、……ねえ」
シントは考える。彼――海棠実は、一体何を考えてるんだと。
葵はこんなにもおバカちゃんだけど、ちゃんと見えている、理解力のある人間だ。……だからあの人がそう言ったのなら、特に気にすることもないのか。
「(……いや、違うな)」
彼女には、決して見えないものが一つだけある。それは――葵自身だった。
「(……そうか。その願いとやらに、あなたは葵のことも入れてるのか。もしかしたら道明寺も……)」
……は。はは。
どんだけ強かか。どんだけ貪欲か。
どこまであなたは、わかっているのか。
「(その願い、俺も少しだけ、参加させてもらうことにしますよ)」
急に笑い出したシントに、葵はきっと、彼もどこかの誰かと交信できる術を身に付けたのだろうと、うんうん頷いて感心していた。
(※違います)



