すべてはあの花のために①


「はあ……で? これからどうするの。ていうか理事長は知ってるんだっけ」

「うん。道明寺のことも、ついでに“わたし”のことも。学校で知ってる唯一の人だ」


 これからどうしていくのか。彼らは、真剣に話し始めることにした。


「そう。理事長は、知っている側の人間ね。てか、知ってるなら普通気を利かせるもんじゃない?」

「理事長と生徒会の一人がいとこ同士でね、その子から直々に頼まれたんだ」

「それだけが理由なら、海棠は今夜中にでも地に落ちるね」

「シント。わたしはさ、理事長の願いを、どうしてもやり遂げたいんだよ」

「願い、……ねえ」


 シントは考える。彼――海棠実は、一体何を考えてるんだと。

 葵はこんなにもおバカちゃんだけど、ちゃんと見えている、理解力のある人間だ。……だからあの人がそう言ったのなら、特に気にすることもないのか。


「(……いや、違うな)」


 彼女には、決して見えないものが一つだけある。それは――葵自身だった。


「(……そうか。その願いとやらに、あなたは葵のことも入れてるのか。もしかしたら道明寺も……)」


 ……は。はは。
 どんだけ強かか。どんだけ貪欲か。
 どこまであなたは、わかっているのか。


「(その願い、俺も少しだけ、参加させてもらうことにしますよ)」


 急に笑い出したシントに、葵はきっと、彼もどこかの誰かと交信できる術を身に付けたのだろうと、うんうん頷いて感心していた。
(※違います)