すべてはあの花のために①


「まず一つ目。西の方は今治安が悪いって話、葵も知ってるよね? 近道したのかもしれないけど、そこへ一人で行ったこと。これはいただけない。二つ目は不良たちと戦ったこと。いくら葵が強くても、危険なことはして欲しくない。三つ目は、本性出しちゃったこと。それで生徒会に入ったこと。これはかなり本気で怒ってる……というか、呆れてるに近いか」

「それは……」

「ねえ葵。これからお前、どうするの」

「そっ、それを一緒にシントに考えてもらおうかと思っ――」

「はあ? ふざけてるの?」

「すみません……っ」


 わかっている。今回ばかりは、最初から最後まで、彼らにバレてしまった自分が悪いのだ。

 しょんぼりとしていたら、「……でもな?」とシントは嬉しそうな顔付きで続けた。



「一つ目は、勘違いだったとしても、不良からその子を助けてあげたこと。逆に見捨ててたら怒ってるかも。それは素直に褒められるところ。二つ目は、ここ以外に素でいられるところが増えたこと。三つ目は、お前に友達と仲間がたくさんできたこと。……嬉しくて、連絡するのも忘れてたんだろ? だからそれは本当によかった。俺も今、すごい嬉しいよ」


 自分のことのように喜んでくれたシントに、葵もつい嬉しくなって、彼に飛びつい――――


 ダンッッ!!

 ……え? なんで?
 しかも今までで一番大きい音なんですけど? 何故そんなに本気でやった??


「(どうしてわたしは、執事に思い切り一本背負いを喰らわされたのだろう……)」
(※受け身はばっちり)


「あ。ごめん。つい」

「ついってなんだー!」

「いやごめん。今、本気で葵がなまはげに見えた」

「わりぃ子゛はいねえか゛ー……ってかあ!?」



((いや~すごいすごい。あんたノリツッコミもできるじゃん。まあまわりがボケるから、あんたのボケは最近霞んでるけど))

「(まじか!? いや、何となくだけど、そんな気がしてた。これでヒロイン交代とか言われたら本気で泣くよ!?)」

((それは大丈夫じゃない? いいからそろそろ戻ってあげなよ。あんたの酷い頭が、もっとおかしくなったのかって、シント驚いたまま固まってるから))

「(本当だ! どこまで行ったっけ?!)」

((まだなまはげの下り。早く反応してあげて))

「(おうっ! 任せろっ!!)」


 葵は、こほんと小さく咳払いをして叫んだ。


「わたしはまだヒロインでよかったです!」

「……はあ?」


 おーっと。混じってしまった。これ心の声の方だった。


「いっ、いえ! 何でもありません隊長!」

「はあ?」

「なんでもありません本当すみませんごめんなさいわたしが悪いんですっ」

「わかればいいんだよわかれば(……またどっかの誰かと交信してたのか)」


 なんとなく状況が読めているシントさん。流石です。