「はああん?」
「はい。すみません。わたしが悪いんです」
話してる途中から険しくなっていった顔は、今ではもう般若のようだった。
「ねえ。バカじゃないの? バカなんでしょ? バカなんだよね? バ〇ボンとパパに謝れよ!」
いやいや、最後関係ない――――
「バカ〇ンとパパとハジ〇ちゃんごめんなさーい!!」
「ハ〇メちゃんは天才だっ!」
……なんだここの主従関係。シント、君も重傷だな。完璧主人に染められとるやないかい。
「ふっふっふっ。これでいいの――あ痛っ!」
「言わせないから! 俺が言うんだから!」
「嫌だ! わたしが言うんだ!」
「絶対させないから!」
……似た者同士か。
「まあそれは置いといて(くそ、葵のせいで絶好のタイミング逃した)」
「そうだね、それは置いておこう(あともうちょっとだったのにいっ)」
悔しさ半分、阻止できた満足感半分が落ち着いて。シントは「葵の話を要約すると……」と、一区切りごとに指を一本ずつ立てながら整理をしていった。
まず、不良から少年を救ったと。
(この時点で、はあ? なんだけど)
↓
それで、断ろうとしたら一本背負いして?
(葵強いもんね……)
↓
その時に、クマのパンツの写真撮られて?
(お気に入りなのもわかるけど、そろそろ卒業しようね)
↓
クマの写真と不良をぼこった動画をばら撒かれたくなかったら、生徒会に入れって脅されて?
↓
入ったら入ったで問題児だらけ。
↓
でも人生初の友達と仲間ができて?
↓
挙げ句の果てには、理事長にもするって言っちゃったと。
「そんなこと言うのはこの口か!」
「いひゃいれひゅ」
(訳:痛いです)
葵のほっぺたをびろ~んと伸ばすシントの言葉の端々には、少しばかりの棘と嫌味が入っていたけれど。それに反して彼の顔は、とてもとても嬉しそうだった。
「……シント怒ってな――「怒ってるよ!」うわお!」
食い気味で怒鳴られた。



