すべてはあの花のために①


「はああん?」

「はい。すみません。わたしが悪いんです」


 話してる途中から険しくなっていった顔は、今ではもう般若のようだった。


「ねえ。バカじゃないの? バカなんでしょ? バカなんだよね? バ〇ボンとパパに謝れよ!」


 いやいや、最後関係ない――――


「バカ〇ンとパパとハジ〇ちゃんごめんなさーい!!」

「ハ〇メちゃんは天才だっ!」


 ……なんだここの主従関係。シント、君も重傷だな。完璧主人に染められとるやないかい。


「ふっふっふっ。これでいいの――あ痛っ!」

「言わせないから! 俺が言うんだから!」

「嫌だ! わたしが言うんだ!」

「絶対させないから!」


 ……似た者同士か。



「まあそれは置いといて(くそ、葵のせいで絶好のタイミング逃した)」

「そうだね、それは置いておこう(あともうちょっとだったのにいっ)」


 悔しさ半分、阻止できた満足感半分が落ち着いて。シントは「葵の話を要約すると……」と、一区切りごとに指を一本ずつ立てながら整理をしていった。


 まず、不良から少年を救ったと。
(この時点で、はあ? なんだけど)
 ↓
 それで、断ろうとしたら一本背負いして?
(葵強いもんね……)
 ↓
 その時に、クマのパンツの写真撮られて?
(お気に入りなのもわかるけど、そろそろ卒業しようね)
 ↓
 クマの写真と不良をぼこった動画をばら撒かれたくなかったら、生徒会に入れって脅されて?
 ↓
 入ったら入ったで問題児だらけ。
 ↓
 でも人生初の友達と仲間ができて?
 ↓
 挙げ句の果てには、理事長にもするって言っちゃったと。



「そんなこと言うのはこの口か!」

「いひゃいれひゅ」
(訳:痛いです)


 葵のほっぺたをびろ~んと伸ばすシントの言葉の端々には、少しばかりの棘と嫌味が入っていたけれど。それに反して彼の顔は、とてもとても嬉しそうだった。


「……シント怒ってな――「怒ってるよ!」うわお!」


 食い気味で怒鳴られた。