葵の部屋に到着し、ガチャッと扉が閉まると、二人の雰囲気が一気に変わる。
「ねえ! マジでいい加減にしてくれない? すんげえ心配したんだけど? 今何時かわかってんの? SP出動させようかと思ってたんだけど??」
「す、すみませんっ!」
「8時だよ8時! いつも授業が終わって真っ直ぐ帰ってくるのに8時だよ?! 全員集合しないとダメだろ!」
「えっ? い、いや、あの……ひっ」
「わたしだってそりゃ、再放送あるなら全力で観たいんですけどっ!」なんて抗議しようと思ったら、睨まれてしまったのでもう何も言えず。
「しかも、今日って授業とかないんだよね? ねえ、葵さ、携帯持ってんでしょ。何のために持ってんだっけ。連絡するためだよね? ちゃんと携帯してるんでしょ? 連絡しないんなら携帯する意味ないじゃん。携帯してるのに携帯使わないとか携帯さんに失礼でしょ!」
「(いえ、わたしが持ってるのはスマホ……)」
心の中でそう抵抗するも、ツッコみどころはやっぱり斜め上な葵さん。まあシントも何を言ってるか意味不明だけど。
「はあ。はあ。……っはあ。まあ無事に帰ってきたからいいんだけど。どうやら、連絡ができないほどいろいろあったみたいだし?」
あまりの勢いに、思わず息切れしてしまうシント。様子を見る限り、どうやら二人きりの時はお互い敬語はやめて話そうというのが約束事みたいだ。
「ごめんよおー……。だって本当にいろいろあったんだもんっ」
「葵、本当のこと言ってみ」
「…………」
「…………」
「……で、できなかったんじゃなくて、すっかり抜けてました。ごめんなさい」
「よろしい」
こんな感じじゃ、どっちが主人なのかちぐはぐだ。
「わかったんならいいよ。で? 一体何があったの?」
「そ、……それがね――――?」
後が怖いと思いながら、でも隠してしまったらもっと恐ろしいことに成りかねないため、葵は正直に昨日から今日までのことを話し出したのだった。



