すべてはあの花のために①


 それから、みんなと帰っていると、ある交差点で帰りの道が分かれてしまい、今はアキラとツバサの二人と一緒に帰っている。

 どうしてツバサはヒナタと一緒に帰ってないんだろう、とか。どうしてキサの別れ際の顔が暗かったのか、とか。聞きたいことは山ほどあったが、まあそれは焦らずゆっくり聞くことにしよう。


「それで、何か情報は掴めたの? そのボスってのは見つかりそう?」


 先程言っていたボスの情報は、今どこまで集まっているのか。


「それが全然わかっていないんだ。下っ端の奴らに聞いても、何の情報も出てこない。どうやら何重に命令して足がつかないよう、慎重にやっているらしい」

「しかも、何が目的なのかサッパリわかんないのよ。本当、困ったもんだわ」


 ツバサがオーバーリアクションでそう付け加える。


「……もしかして、ツバサくんがさっき不良の人にわざと近付いたのって、その情報を聞き出そうとしたの? これからはこんな活動ばっかりするってこと?」

「あら、アンタなかなか鋭いじゃない。情報収集は基本アタシとカナ、それとキサね。今回はたまたま向こうから寄ってきてくれたけど、恐らく西が落ち着くまでは、こんな感じになるでしょうね」


 片足を折り曲げ両手をグーにして顎の下に持って行き、ウインクまでしたツバサはとても可愛らしいが。

 葵の顔は険しく、一言「ダメだ」と告げた。


「だって、それって危ないじゃないか。今日はたまたま大丈夫だったかも知れない。今までもだ。でも、だからって今後も大丈夫なんてわからない。今後はもっと危険になるかも知れない! そんな危ないこと。……無理だけは、しないで……」


 急に怒ったと思ったら、だんだんと声に怒気も覇気もなくなっていった葵を見て、アキラとツバサは目をパチパチと瞬きをする。


「あのね、さっき言ったでしょう。こう見えて、アタシたちは強いのよ。それに、普段はこんなじゃないから。もっと穏便に情報は聞き出してる。だから、もし変な奴に絡まれても――」


 葵を安心させるようにツバサがゆっくり柔らかい声でそう伝えてくるが、葵の表情だけは、変わらず険しかった。


「確かに、さっきの不良に絡まれても堂々としているみんなは、少々のことがあってもやられたりはしないと思う」

「だったら……」


 と、ツバサが口を挟もうとするが。


「でも、少々のことじゃなかったらどうする?! それはツバサくんやカナデくん、キサちゃんだけじゃないよ? 他のみんなだって一緒! 自分たちより強い人なんていっぱいいる! だからわたしは、“無理だけは”して欲しくないんだ!」