そしてなんと彼らは、たった二人だけで不良くんたちの中へ飛び込んでいってしまったのだ。
「え? ……っ、ええー……!?」
ダメだよ! ダメだって!
一番行かせちゃいけない二人じゃん!!
普段、あんなにふわふわしてて、愛らしくて。二人だけ、なんか温かい雰囲気醸し出してる唯一の癒しがあー……。
そう思っていたら、「大丈夫よあっちゃん」にっこり笑顔でキサがそう言ってきた。
「いやいや! ダメだって! あの二人、一番行かせちゃいけないよ? だってマイナスイオンだもん!」
「(マイナスイオン?)あのね、あっちゃんは編入生だからしょうがないと思うんだけど、桜李と茜ってね? ああ見えて実は――」
そう言っている間に、オウリとアカネを目掛けて不良くんたちが拳を振り下ろそうとしているではないか!
「(もうっ、だめ……っ!)」
葵は見ていたくなくて思いっきり目を閉じた。
――ダンッ!!
……? あれ。聞き慣れた音……。
「空手と柔道の大会で優勝するほどの実力者だから」
キサの声が静かに、確実に届いた。
なんとっ!! それは本当ですか! あの可愛らしいお二人が?
そう思っていたら二人は背中合わせになって、ニヤリと笑いながら襲いかかってくる不良たちをどんどん投げ飛ばしていった。
(※空手や柔道は暴力に使ってはいけません)
「(あれは、本当にオウリくんとアカネくんなのか? めちゃくちゃ強いんだけど、二人のそんな意地悪な顔は、できれば見たくなかったんですけどー!)」
そこで葵は「あれ?」と一個の疑問点が浮かんだ。
「あの~、キサさん? つかぬ事をお聞きしますが……」
「はい! 何ですか? あっちゃんさん!」
またいつの間にかキサが眼鏡をクイッと上げていた。
どこかで見たことのある黒縁眼鏡は、どうやらアカネのもののようで、戦闘中はどうやら彼は眼鏡を外すらしい。
ん? でもそれ、伊達じゃないか?
そんなことを悩んでいると、他の残りのメンバーは何故かオウリたちに倒された不良さんたちに声をかけていた。
「あ、あの、わたし昨日オウリくん助けましたけど、それって別に助けなくても全然だったんじゃ……」
葵は昨日、男子中学生と間違えた可愛いオウリを助けたのだ。危ないと思って。
「うんっ。全然大丈夫だったんだよ~。桜李もさ、『さあやるぞ!』って思ってたところにあっちゃんがきて、そりゃもうビックリ!」
「そうそう。それで、アンタが変な技名言いながらどんどん倒してくから、手出さなくていいんじゃない? ってなって」
「え? あれって、うちのクラスのアオイちゃんじゃない? ってなってー」
「これは大変だ! ってなってよ」
「動画に収められたというわけだ。よかったな」
「全然よくないよ!?」
いつの間にか帰ってきた奴らがそんなことを言うし。
「ま、あんたは助けなくてもよかった人間を助けたせいで、晴れてオレらの下僕になったわけだ。オメデトー」
「めでたくないー……」
え? てことはさ、助けてなかったら弱み握られてなかったってことですか? そういうことですか!?
「な、なんということだ……(しくしく)」



