――パンッ!!
で、ですよねえー……。
アキラの顔は顔面どころか、頭まるごとピンクのガムで覆い尽くされていた。
「(あんたは一体何やってんだ!)」
ビックリしたのかアキラは固まり、チカゼは目を大きく見開いている。
ようやくピンクの世界から帰ってきたのか。アキラは当たり前のように指でガムを口元に戻し、そして何事もなかったかのようにまた噛み始める。
チカゼはまたアキラを尊敬の眼差しで見つめており、「やっぱすっげーな、アキは!」と言っているように聞こえる。その反応を見て、『だろ?』みたいなドヤ顔をしているアキラ。
……誰も止める気、ないのか。
可哀想な不良さん。声をかけたのが運の尽きだったね。そう思っていた時。
「は?! な、なんでなんだツバサさん……!」
え? なになに? どうしたの?
不良さんは、必死な様子でツバサの肩を掴んでいた。
「なんで、俺じゃダメなんだ!!」
え?! もうそんな話までいってたの!?
あなたたち付き合おう的な話してるの!?
「だ・か・ら。アタシはー、アンタみたいな“男”には興味がないって言ってんの(汚い手で触んな)」
ペシッと不良さんの手を払い、何もなかったかのようにこっちへ戻ってくるツバサ。
どうやら彼はあんな形だが、そういう対象はちゃんと女性らしい。そして最後に――――。
「アンタ男なんでしょ? アタシより立派なもん付けてから出直してこいや」
……いや。それ、どう考えたってヤバいですよね?
ほら! さっきまで話してた不良さん! 顔が青くなってきてますよ! 泡吹いちゃってますよ?!
あちらさんなんかは、多分状況が飲み込めたんでしょうよ。彼を馬鹿にされて、今にも襲いかかってきそう。まあそもそも騙された彼が悪いんだけど。
こっちのメンバーは……あっ、そうですよねー。皆さん必死に笑いを抑えてらっしゃる。
「くっ、……くそお! お前ら! やっちまえぇええぇー……っ!」
馬鹿にされた不良さんが半分泣きながらそう言う。後ろにいた不良さんたちは、哀れむような目で見ながらこちらに襲いかかってきた。
「(やっばいじゃん! ここは流石にわたしが行かないと)」
袖を捲り上げてやる気満々で戦いに行こうとしたら、後ろから両肩を掴まれ、止められてしまった。
「(な?! 何故止めるんだ! めちゃ強お嬢様なんだぞ設定では! 主役が出ないでどうするんだー!)」
本当はめちゃくちゃ出たかった葵を止めたのはなんと、オウリとアカネだった。
彼らは葵の顔を覗き込むように見つめた後、
――見てて。
やる気で満ちた瞳。ウインク付きの笑顔が、そう言っていた。



