すべてはあの花のために①


「(いっ、いやいやいや! わけわからんぞ? しかもわけわかってないのわたしだけじゃないから。ほら、そんなこと言ってるから後ろの不良さんたち目が点になってんぞ? 気付いてる??)」


 そうこうしているうちに、最初は呆気にとられていたツバサが、一瞬ニヤ~っとした顔になったのを、葵は見逃さなかった。


「(絶対悪いこと考えてるー……!)」


 ツバサは不良くんの顔から首筋をつーっと指先で撫でたあと、その手を自分のほっぺに持って行き。


「ツバサ、うれしいっ(キャハッ)」


 なーんて言いやがった。
 ノリノリですやん。不良くんなんかもうすでにデレデレだし。

 あーあ、可哀想に。このあと地獄が待っているとも知らずに。



「そ、そうか。あんた、ツバサさんっていうのか」

「そうよ~ん。あなたのお名前は~?」


 ああ、やっぱりノリノリだ。
 こらこら。人の胸元を指でいじいじしないの。


「つ、ツバサさん。もしよかったらこ、このあと……」

「え~? どうしよっかな~?」


 いやいやあなたたち! そこで勝手に二人の世界入らないでくれる?! あちらさんもだけど、こっちのメンバーもみんな唖然として……ん?


 おーいキサさん?
 あなた何堂々と爪磨いてらっしゃるんです?

 ヒナタさん?
 あなた本当にスマホ好きね~。お兄さんのこと止めてやってくれませんかね?

 カナデさーん……?!
 ここでナンパはやめようね! 確かに美人さんだったけどもさ!

 ……オウリさん? アカネさん?
 そんなクスクス笑わないであげて! そして止めてあげて! 彼が、これからショックであの世に行ってしまう前に!



「(ここはもう、チカくん! ――君に決めた! ……? どうしたの?)」


 某アニメのように指差して『行けっ!』ってやってみた! 本当はボール投げたかったけど。
 でも、どうやらチカゼはアキラに夢中のようだ。ほ、本当に尊敬してるんだ……。


 アキラは、どうやら風船ガムを膨らませているようだ。それがあまりにも大きく膨らんでいる。
「す、すっげーなアキ!」と言いたげなキラキラした目でその様子を見つめるチカゼ。


 いや、でもさ。たぶんそのままいったら――――