「ちょっと待てえーい!」
帰ろうとしたところで、鋭いツッコミが綺麗に決まった。
カナデのツッコミレベルが1上がった▼
「いやいやいや! なんで蹴ったのよチカちゃん! めちゃくちゃ痛かったんだけど?! 治ってたおでこもまた痛くなったんですけど?! しかもアオイちゃんも何故スルー?! 俺だけ置いてけぼりとか、寂しいじゃんかー!」
カナデの男らしさレベルが5下がった▼
「はあ? そ、そんなの、お前がこいつのこ……変なとこ触ろうとしたから」
「チカは、下僕の腰付近を触ろうとしたカナの危険を察知して、先に助けてあげたんだよ。ヨカッタネ。寿命が延びて」
チカゼは一体何を言おうとしたのか、ヒナタのだいぶ失礼な回答に遮られてしまった。
「違うよチカくん。カナデくんは明日の生徒会の大仕事について話してくれようと」
「えー? なーにチカ? あんたもしかしてヤキモチ妬いちゃってんのー?」
「ばっ!? ちっげーよ! なんでオレが、こんな変態に――」
「アオイちゃんアオイちゃん」
そんな失礼な言葉が飛び交う中、手招するカナデに呼ばれ。葵は特に何も考えず、呼ばれるままに彼の傍へと駆け寄る。
「――!?」
すると、何故か後ろから、むぎゅっと抱き締められてしまったではないか。
一体どういうことだ?! と思って少し振り返ってみると、カナデは静かに人差し指を立てた。……喋るなってこと?
「チーカちゃん」
しかもカナデは、次にチカゼを呼び始め。ぎゅっと葵のお腹に回した腕に少し力を入れたあと、頭の上に顎を乗せた。
「俺ら、もうこういう関係なんだー」
男性陣がピシッと固まった、気がした。
が、言った張本人だけは、どこか楽しそうだった。
「(ん? 一体どういう関係だ?)」
――ハッ!
もっ、もしかして、いつの間にか友達から――
「(親友になったのか?!)」
((う~んと、これはなかなかツッコみにくいよ? 普段ならもうちょっとさ、斜め上の解答とかあるじゃない? それ、否定できないヤツだから。『そうね、そうかもね』ぐらいしか言えないから!))
「(え? ち、違うの?)」
((いや、泣きそうな声で聞かれても……親友になってるかは今度、直接聞いてみな。少なくとも今のこの状況は、親友を表しているわけじゃないからね))
「(そうか! わかった! 今度聞く!)」
((本当、素直でいい子だよ。あんたは))



