それではここら辺でもう少し、彼女の紹介をしておきましょう。
彼女の名前は、道明寺葵。昨年の春から桜ヶ丘高校に通う、今日から高校二年生。
実はこの学校。小学校の試験を合格すれば、高校まで進学できちゃうエスカレーター式。もちろん途中からの編入は可能だが、編入試験が途轍もなく難しく。小学校から顔触れはほぼ変わらず、見た顔ばかり。
しかし彼女。以前は違う学校に通っていたらしいが、訳あって昨年、この学校に編入してきたそうだ。
「(その訳っていうのが、“道明寺のため”になるんだけどね……)」
【道明寺財閥】
古くから歴代に渡って守られてきた、由緒正しい財閥のうちの一つ。
だが、過去にかなり危機的状況までに陥り、長期間に渡り低迷。虫の息となり一度散りかけたが、それを無事立て直し今に至る。
けれど最近、またその兆候が現れはじめ、存続が危ういやら何やらで……。
そんな、ピンチを迎えた道明寺の、取った作戦がこれだ!
『葵を桜に通わせてー、Sクラスになってもらってー、将来的に道明寺をちょっとでも支えてもらっちゃおうよ!』
「(ま、大雑把に言ったらねー)」
大雑把って。
……えー、ごほん。
どうやら、その危うい感じは表には出てないようで、お金持ちの生徒たちは少しでも取り入ろうと、毎日のように取っ替え引っ替え。
途中編入と、財閥令嬢。それが原因となって、それ以外の生徒たちには遠巻きに見られてしまう。
だから彼女には、本当の友達と呼べる人が一人もいないのだ。
「(まあ、乗り気はしないけど)」
そんな状態の、道明寺財閥を守っていくため。
彼女は今日もまた、笑顔を振りまく。
「(大体の理由はそんな感じかな?)」
他にもどうやら理由があるみたいですが。
……それはまた、別の機会に致しましょう。



